日が沈み、電灯がひとつずつ灯るころ、路地の奥で小さな戸が開きます。 ここは“妖怪画舫”。客より先にやって来るのは、古い話と新しい風です。 角を研ぐ赤鬼は、怒るばかりかと思えば、ときどき星空に見とれて立ち尽くす。 水面を撫でて歩く河童は、いたずらの途中でこちらにウィンクを残す。 山の端を渡る天狗は、団扇一つで空の模様を描き替えてしまう。 ——そんな連中が、今夜も絵の具の上に降りてきます。 筆致は荒く、色は深く。怖さと愛嬌が背中合わせになる瞬間を、そのまま封じました。 壁に掛ければ、部屋の気圧がほんの少し変わる。 服に刷れば、歩くたびに小さな物語が背中で揺れる。 人と世界の“あわい”を楽しむための、ささやかな護符のような作品たち。 どうぞ、あなたの暮らしに一匹、連れて帰ってください。