怪物の目がキラリと光ると
口から泡を吹いて倒れてしまった先生は、
お人形のように白目が黒目になって目を覚ましました。

「うんっ？ここはどこだ？？？」
「さぁ、お前の望みを言え。１つだけ叶えてやろう」

怪物を見てまた体が硬直しガ気を失いそうになる先生に
業を煮やした怪物は、眉間にジワを寄せると、一喝。

「喝だーーー！！！」
「ヒエェエ！(；ﾟДﾟ)」

ダンゴムシのように小さく丸まる先生。
でも、なぜか目の前に「かつ丼」が！

（？？？）

怪物はあごをしゃくって「食べろ」と合図。

ポカンとしながらも
美味しそうな匂いとカツのシズル感に負けてしまい
１口食べてみると、
それはカツよりも衣の方が厚い家庭料理のカツ丼でした。

しかし、食べながら涙があふれて止まりません。

（…さんの…母さんの…味だ。ウゥッゥゥ）

小さい頃は、肉があまり食べれなくて
衣に甘いタレをかけて食べるのが好きで、
そんな子供のために母が特別に作った懐かしいカツ丼。

………ヾ(｡>﹏<｡)ﾉ………

目を真っ赤にしながら食べ終わる頃にはもう、
「早く家に帰りたい！」という思いはすっかり消えます。

そして、心の底から力強い声がハッキリ聞こえきました。

（運命を変える！逃げたらダメだ！神様、ご加護を…）

ひっぱ叩かれながらも頭のシッポをガッチリ捕まえると

「お願いです。どうかこれを取って下さい。
　このシッポのせいでみんなが悲惨になるんです。
　未来を…どうか…変えてください！」

「………分かった。お前の望み、1度だけ叶えてやろう」

怪物は2つの目を閉じ、不思議な呪文を3回唱えると、
4本の足をまっすぐ伸ばして天を仰ぎました。

「セパレートーーー！！！」

………　go~♪ go~♪ go~♪ go~♪ go~♪　………

ナゾの歌声が聞こえた瞬間、シッポがどさりと落下。
つむじを撫でさすり足元にあるシッポを拾い上げると、
心の底からふつふつ湧き上がってくるものがあります。

（やった。やったー！やったんだ！！ちゅいに！！！）

怪物は、光の微粒子となり何処へともなく消え去ります。

急に明るくなった空を見つめながら先生は、
そばにあった大きな石にもたれかかると、

（ここ数日、一体何だったんだろう？？？
　いつも心の中にネコがあふれていた気がする…）

なぜか不意に目頭が熱くなり、
（夢の中で愛猫にまた会ったら「ありがとう」の代わりに、
　ワッショイ胴上げしてあげよう…　フフフ(*´艸`)）

先生は、そっと涙をぬぐうと笑顔のまま
いつまでもいつまでも遠くの空をながめました。