古賀稔彦という希代の武道家が逝かれました。
古賀稔彦という御仁を多くの人が忘れてはいけない。この思いを何かに残したい。
そこで、古賀稔彦という御仁から感じたインスピレーションを言葉にし、それをデザインにしました。
買って頂く方々がおられなくても良い。それより、偶然にも目にした人が、何か熱いものを感じて頂ければと思います。

□デザインのコンセプト□
柔道、剣道はじめ、日本には「道」とつく武道がある。格闘技と道がつく武道には、似て非なるものがあることを、古賀稔彦という大人物は私たちに教えてくれる。

武道の世界は、勝ちさえすれば良いのではなく、勝ち方にこだわる。そこには、高見に立った者でなければ、見えず感じずの美しくも厳しい世界がある。

確かに勝負事は、勝ちさえすれば名誉が得られる。しかし、美しい勝ちでなければ、名誉はあっても誇りは生まれない。

古賀稔彦という御仁には、狡い勝ち、卑怯な勝ち、汚い勝ちがない。そして何より、相手を貶めるために勝つのではないということ。
覇気と殺気の違いとは何か。それを背中で教えてくれる希代の武道家。それが古賀稔彦という柔道家と感じる。

古賀稔彦という御仁の柔道は、私たちにとても大事なことを教えてくれる。
古賀稔彦という御仁が、殺気ではなく、覇気をもって真っ向勝負するなかに、相手と共に高見に立ち、共に成長しようとする大志を感じる。この姿に、自他共栄の真意がみえる。

闘いになれば全身全霊で勝負師となり、闘いから離れれば、誰よりも優しい心となる。
優しさとは甘さではなく、人を活かす心、人の思いを酌む心。

剣道や空手道は、己一人でも修養ができる。しかし、柔道はそれができない。このことを誰よりも知っている。それが、古賀稔彦という御仁と感じる。柔道は相手がいてこその武道。相手への感謝、敬意。それが、すべての始まりだと、あの優しい眼差しが教えてくれる。

強いからこそ、虚勢をはる必要がなく。優れているからこそ威張ることもない。
これぞ、強者の構えそのもの。強いからこそ、心の余裕が生まれ。心の余裕が、心身の脱落を生み、間合いに現れる。体が小さくとも、向かい合えば大きく見える。これが、その所以である。

美しい勝ちに、「道」の哲学がある。
強者にとっての求道とは単なる勝ちを求める道ではなく、自分の生き方の有り様を求める道なのだと。
古賀稔彦という御仁の柔道からは、強い覇気は感じても、殺気を感じない。
これこそが「道」の哲学の真髄ではないだろうか。

古賀稔彦という御仁から感じる「優れる者は人に優しい」という生き方を、私たちは忘れてはならない。それが、デザインのコンセプトであります。

今、コロナ禍で追い詰められている人達も多くいるでしょう。
人は辛い時こそ、勝ちにこだわるのではなく、勝ち方にこだわる方が良い。それが、人としての道を踏み外さない確実な方法ではないか。

人間は追い詰められた時にこそ、自分の本性が問われる。
だからこそ、常日頃から自分の生き方を問う。絶体絶命へと追い詰められた時、悪魔に魂をうりたくなる欲望に勝つ覚悟をもつ。この生き方こそ、美しき勝者なのではないか。

そして、人間の真の美しさとは、外見に宿るものではなく、内面に宿るということを、古賀稔彦という御仁の生き方や精神が教えてくれる。１００年後、２００年後も、この地に残したい。残っていて欲しい。だからこそ、何かの形で残したいと思ったのであります。

最後になりましたが、2021年3月24日に逝去された古賀稔彦様に対し、謹んで哀悼の意を表すとともに、心より感謝を申し上げます。

合掌

Gentleness overcomes power.　
柔よく剛を制するという感覚を踏まえると、GentlenessよりTenderの方が言葉の意味として適しているかも知れません。
今回は、音の響きからGentlenessにしました。ご了承ください。