「お前はいつか子息の一人によって王座を追放され、死に追いやられるであろう」
死に際の父からそう予言されたサトゥルヌスは深い絶望の淵にいた。何も男根を切り落としたからって、そんな怖いこと言わなくたっていいじゃないか。どうせはったりに決まっている。
そう言い聞かせるものの、サトゥルヌスの不安は日に日に大きくなるばかり。眠れない夜が続いていた。このままでは子息が生まれる前に精神崩壊し自滅してしまう。かくなる上は――

サトゥルヌスは溜まっていたチラシを引っ張り出し、すぐさまダイヤルを回す。その指に迷いはない。
「シーフードピザLサイズ2枚、それとサイドメニューにポテトください」
彼の不安を取り除く唯一の存在。それがピザだった。
彼は幼いころより落ち込んだ時にはいつもピザを食べていた。目にも鮮やかな色とりどりの具材、そしてジューシーなトマトの酸味、濃厚なチーズの香りが鼻を突き抜け、それら全てが彼の胃袋を、心を満たしていくのだ。

「お待たせいたしました～」
程なくしてピザが届いた。目にもとまらぬ速さで会計を済ませるや否や、ピザに食らいつく。
もう予言などを恐れるサトゥルヌスはどこにもいない。彼の唯一の至福のひと時を、誰にも邪魔することはできない。
嗚呼！ピザよ、我らが生きる糧、ピザよ。我らを導き給え！我らを救い給え！