かつてメニューに「スマイル無料」の表記があった或る大手ハンバーガーチェーンは今でもテイクアウトの際、「スマイル」をオーダーすると店員さんが紙袋に簡単な絵やメッセージを描いてくれる。本作ではそれを無断で転用したプリントを販売する。
（作品のリサーチで過去に何回か頼んだのだけれど、この注文は割と珍しいもののようで、どの店舗でも、なぜか若い女性店員さん同士でキャッキャと騒ぎながら描いてくれた。）

搾取を扱う類例としてサンチアゴ・シエラさんの「160cm line tattooed on 4 people」（スペイン人の作家が、キューバの4人の男性の背中に1人あたり30ドルの報酬と引き換えにタトゥーで合計160cmの直線を引く作品）があげられる。
（因みにタトゥーをいれているその様子は違法アップロードなのかは知らないが、YOUTUBE上の動画で見ることができる。）

本作とそのシエラ作品に関して、被搾取者（キューバ人男性たち／ハンバーガーショップ店員）を軸に思いつく相違点を書き出す。

・被搾取者への対価（シエラ：有償／　本作：無償）　
・被搾取者の外面上の様子（シエラ：つまらなそう／本作：楽しそう）
・被搾取者の作品への認識（シエラ：合意の上　／本作：認知していない）
・被搾取者の契約相手（シエラ：恐らくシエラ本人／本作：ハンバーガーチェーン）
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ハンバーガーショップの店員さんは、この「無料スマイル」の注文を、何らかの形で拒否することも原理的にはできるはずだ。しかし、恐らくほとんど全ての店員さんは断らない（断れない）と予想される。
FREE(無料)　だけどFREE（自由）でないスマイル。
（この「スマイル」がアメリカ本土にもあるかは知らないが、どちらにしろ）私はここに依然、残る日本的な労働の在り方の典型を見るように思った。

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