宮本武蔵を待って早5年。待てども宿敵は来ず、登っては降っていく日をただ追いながら、佐々木小次郎はその時を待ち続けた。しかしある日、遂に痺れを切らした彼は巌流島で商いを始めたのだった。初めはカモメに貝を売り、細々と生計を立てていた。しかし天下の佐々木小次郎がそのまま燻っているハズがない。豪腕敏腕を振るいに奮って、正に破竹の勢いで勢力を拡大していったのだ。これには流石の宮本武蔵も面食らったようで、暫くは千歳飴を帯刀していたとか、いないとか。 要するにヤバイ…。 しかし盛者必衰の理には抗え無かった。一つのやり方に固執し続けた為に、小次郎の商いは時代に取り残されてしまったのだ。経営難に見舞われ、殆どの店舗が閉店を余儀なくされてしまった。そして現代、系列店はこのアンテナショップを残すのみとなった。 要するにヤバイ…。 言い忘れていたが、彼の夢は商人として大成する事では無かった。彼の夢は、あくまで宮本武蔵との果し合いであった…。自分の店が有名になれば、フラリと武蔵が立ち寄ってくれるかもしれない、そんな淡い期待に、彼は人生を賭けたのだ。 要するにヤバイ…。 私は彼からこのアンテナショップと意思を継いだ者だ。今日も商いに精を出しながら、武蔵を待ち続けている。つまり、要するにヤバイ…。