アライグマの洗井さんは、幼い頃から洗うことが大好きでした。
洗うことがそれはもう、大の大大大大好きでした。

大きくなった洗井さんは夢だったクリーニング屋さんを開業しました。
今日も森の中、川岸にある洗井さんのお店には行列ができています。

　
掘り起こしたお芋。
寝床に敷くワラ。
巣を作るための木の枝。

なんでも洗ってくれる洗井さん。
彼の仕事は細やかでとても丁寧です。

けれど一つだけ、洗井さんのお店にクリーニングをお願いする時に気をつけなくてはならないことがあります。
それは決して、洗井さんの手を握ったりしないこと。

万が一にも商品の仕上がりに感動して、思わず洗井さんに握手なんてしようものなら...
じゃぼん！じゃぷじゃぷっ

あぁ、言っているそばから。
あのリスさん、どうやら洗い上がった木の実のツヤに感激して、つい洗井さんの手を握ってしまったみたいです。

「うぼっ！洗井さっ、ぷはっ！ぶくぶくぶく...」

　
なんでも洗ってしまう洗井さん。
彼は手に取ったそれがたとえお客さんでも、容赦なく川でじゃぶしゃぶ洗ってしまうのです。

びしょ濡れのリスさんと、ハッと我に返り慌てふためく洗井さん、列に並んだお客さん達は大笑いでそれを見ています。
洗井さんが急いでリスさんの体を乾かすと、その毛並みはいつにも増してツヤツヤになったのでした。

もふもふふかふかになったしっぽを見て、リスさんこれまた感激して言いました。

「洗井さんありがとう！今日はデートだったからおめかししなきゃと思ってたところなんだ！」

そう言ってリスさんは再び洗井さんの手を...じゃぶしゃぶ、ざっぷん！
リスさんから口コミが広がって「デート前には洗井さんと握手しろ」なんてジンクスが流行ることになるのは、まだ少し先のお話。