17世紀オランダの地図製作者アンドレアス・セラリウス(1596頃-1665)による星図集「大宇宙の調和」に収録された星図より、キリスト教化星座図です。
1660年に初版が刊行された「大宇宙の調和」は、専門の天文学者のみならず一般読者の好奇心にも訴えるよう、古代から17世紀にかけて製作されたさまざまな種類の天文学図版を豊富な挿絵や鮮やかな彩色をほどこして再現した装飾星図集。
本図「キリスト教化星図」は、1627年にドイツのユリウス･シラーが発表したキリスト教化星図を踏襲したもの。黄道12星座をキリストの12使徒に置き換えたキリスト教化星座は、熱心なカトリック教徒であったシラーが、古代ギリシアの天文学者プトレマイオスが定めたギリシャ神話星座の異教性を排するために考案した、幻の新星座案でした。
天を北と南に分けるのではなく、縦に切り分けた天球の春分点・秋分点を中心とすることで一画面のうちに北天と南天を同時に収めた珍しい作図が特徴的なセラリウス版キリスト教化星図は、その華やかな装飾性もあいまって、今では忘れられた天文学史の一エピソードを象徴する図版として人気の高い古星図です。